にがつ


まだ目覚めたばかりの
新しいいのちのつぶつぶが
瞼にくっつき 目を閉じさせる


鼻をひくひく
匂いだけ嗅ぎたくなる


おはよう
おはよう
おはよう


つぶつぶをからだの胸のまん中あたりに
そっと置いて じっとしてる


苦味も旨みも
酸いも甘いも


また今日からうまれはじめる



小さな足がたくましく育ってもまだ


ずっと

ずっと

ずっと


うまれつづけるんだよ


白ネギ姫

白い道を歩いた


まだ誰も足跡をつけていない


まっさらな道


白い息を吐きながら


すこしふくらんだ道を歩いていく


歩けば歩くほど


わたしは白い世界に染まっていく


やがて身体は熱をもち


静かに胸は高鳴りはじめ


そうして生まれた白くて甘い鼻歌が


冷たい風にとけていく


お鍋に入った白ネギが


だんだんと甘くなってゆくのは


彼らのなかのワクワクが


こっそり誘い出されたせいか?

梅雨ダンス

紫陽花がささやいてる

ここ ここ

紫陽花はおどる

雨にうたれて

うたいおどる




梅の実は

そのうわさをききつけても

うたわずに

じっとしてる




でもいつか

おどることができたらいいのに

紫陽花にみまもられながら

雨と雨のあいだをとおりぬけて

雨とダンスを

おどってみたい



恋いこがれて

梅の実は



香る




五月


とんがり山
こんにちはー



どこ
とせのびしていた


あのひ あのころ


とんでは はねて
ころげて ふりむき


でんぐり かえる


みるみるうちに
そらにむかって
のびてく
てとて


きみのうまれた
このあおいときを


ぎゅーとしぼって
ごはんにかけたい


ふふふ


すきっぷしたくなるかも


こころの太陽


うまれてきてくれて
ありがとう


五月


かぜと
あおと
ひかりが
おどる



わかばひかる


るるるる るるるる


川のみずが下から上へと流れてゆく


すすすす すすすす


その川のながれをまねするように
名もない草が風にふれる


また
いつか
どこかで
会おう



遠いスペイン
サンティアゴ聖地への道900キロを
共にあるいた
ふるさとのちがう者たちが
いま ここ から離れることに
覚悟する



清々しいものにも
覚悟がいるのだ



清々しくあろう
とすることのうらに
ちぎれるほどの
想いがある



るるるる るるるる


すすすす すすすす


とまることなく
ただ ながれる



四月

かぜにのるつき


三月

いってらっしゃい
いってらっしゃい




ちいさな足が
ちいさなくつをはきます。


いってらっしゃい


いってらっしゃい


その手をはなし


ひかりへむかってあるきはじめる。


いってらっしゃい


はなれていくようなきがしていたのだけど


じつは


かえっていく
いってらっしゃい。


まだ見ぬあなたのせかいへ
かえっていく。


そして見送るわたしは
のこされたような気がしたのだけど


じつは
わたしも
いってらっしゃい。


みんなひかりにむかって
あるきはじめる。
たった一人で。



3月。
目覚めの季節。