船幸祭。

夏に実家に帰ると必ず行かねばならないお店があります。


「寺万商店」


滋賀県瀬田の唐橋を渡ってすぐの、地元のかき氷やさんです。
昔とちっとも変わらない開けっ放しの古い木造のおうちの一階で、家族でかき氷と手作りのアイスを売ってられるお店です。


どんなかき氷やさんに行っても、私の中ではここが一番。
おばあちゃんが口元をもごもごさせながら、大きな声でメニューをきいてくれて、奥さんがその横で汗をかきながら、いつもありがとう〜と言いながら、氷を作ってくれる。




木の枠に青い網の張った扉の向こうでは、また汗をかきかき静かに桑田圭介似のおじさんがアイスを作ってる。


そんな夏季限定の寺万商店が、夜に営業される日があります。


船幸祭の夜。
寺万商店の前は大行列。


地元の神社で近江一ノ宮でもある建部大社から御神輿がでて、唐橋からお御輿が船に乗り瀬田川を渡り、そしてまた建部大社へと戻っていくお祭り。

建部大社の鳥居は、提灯でにぎやかになります。
昔よくこの提灯を見ては、友達と知り合いはいないかと探したものです。


お御輿が船に乗る頃、花火が上がります。



花火、まだかなまだかな。


た〜まや〜!


瀬田川沿いは、屋台でいっぱいになり、色とりどりのテントが川沿いをゆららと照らします。



そして、唐橋の中島では盆踊りが繰り広げられています。



もちろん江州音頭

歌い手さんが変わるたび、「ほら、しっかりせぇ〜」とかけ声があがる。熟練の歌い手さんから緊張気味の若手のお姉さんに代わる。そのかけ声は一層大きくもなり、あったかくもなる。


お姉さんの声は、少し緊張していたけど、とても深くかっこよい声だった。


踊りながら花火を見る。
なんて贅沢なんだろう。


浴衣を羽織りしなやかに踊るおばさんたち。ニコニコほろ酔いのおじさん。狐のお面をかぶってわが道のリズムを刻み、わが道の踊りをおどる小柄な兄さん。


このお祭りが大好きだなぁとつくづくおもう。


屋台あり、お御輿あり、花火があり、太鼓もあって盆踊りもある。
なんでもかんでもごちゃ混ぜだけど、ちっさな夢がたくさん詰まったこのお祭りは、まるで夏の夜の夢のよう。


どこのどなたか知らないたくさんの人たちも、祭りになると出てくる地元のちょい悪お兄さんとお姉さんも、御輿が通るとじっと見つめ、花火が上がると、その足を止めて立ち止まる。



一緒の小学校だった何とか君が、おじさんみたいに腕をくみながら、たぶん彼の家族であろう人たちと花火を眺めてた。


わたしたちもこんな風に花火に見とれる年になったんだねぇと、心の中で声をかける。