梅雨におもう。

梅雨。
六月。
雨のせいで、
あたりが暗くて、
そのぶん、一段と緑が濃くみえる。


気がつけば、
五月はとっくに過ぎていた。


友人とカキツバタを見に行けて、
やっぱり目が紫色になって帰ってきて、
あんまりいい時間だったものだから、
真っ白な髪のおばあちゃんを誘ってまた見に行って、
新しい緑と紫と白いろが
この上なく綺麗なグラデーションのようで、また目がシマシマになった。


娘の誕生日を迎えるこの月を、
知らぬ間に大好きに大好きになっている私。


透けるような佇まいのセンダンの木に今年も挨拶をして、
ハリエンジュの森をクンクン嗅ぎながら、
鴨川を走った、5月。


そして梅雨にはいって。

傘をさして、
長靴を履いたら、こわいものはない。


いつもより人は少ないし、
緑は濃いし、
なかなかいい散歩。


紫陽花に、
ほんとうにたくさん挨拶をして、
梅雨にだんだんと
慣れてくる。


こないだ寄席で初めて聴いた、
南天さんのだんじり太鼓。

雨の日にだんじり太鼓が聴こえてくる
そんな嘘みたいな話を、
お話の中の人たちは、ちいさな少年のために
コンコココンと雨の日に太鼓をならす。

三人とも都合がつかなかった
ある雨の日の晩に
どこからともなく、
雨の音とともに
聴こえてくる、だんじり太鼓。


雨の音は、
こんなわたしたちの生活に、
ふっと
暮らしの片隅にある小さなファンタジーみたいな、
まばたきをする間の夢のような、
そんな世界を
ちらりと見せてくれる
恵みの音。



こっぱれさんにお豆をむいて、と頼むと
おりこうに並べてありました。